脳腫瘍は1万人に1人という発生頻度であり,比較的まれな疾患ですが病状によっては生命に直結するものもあります.一言で脳腫瘍といっても,実際には100種類以上の疾患が含まれ,その中には良性の腫瘍から極めて悪性度の高い腫瘍まで様々なものがあります.

それぞれの疾病によって治療法が異なり,例えば手術のみで治癒が得られる腫瘍もあれば,手術後に化学療法や放射線療法などの追加治療が必要となる腫瘍もあります.病気や病態によっては経過観察をお勧めするものもあります.悪性腫瘍の場合,治療法は手術,化学療法,放射線治療が主軸ですが,近年では分子標的治療や免疫治療,交流電場療法や特殊な放射線治療,ウイルス療法など病態に応じた新しい治療がオプションとして加わっています.どのような脳腫瘍かによって,手術でどこまで摘出すべきなのか,化学療法や放射線治療をすべきか,それ以外のどのような方法です治療するのがよいかなど全く異なります.これらを総合的に判断するためには十分な経験と知識が必要とされます.

我々は,最新の治験,臨床試験について常に情報をアップデートし,患者さん及びご家族に随時ご提案致します.当研究室の大きな特徴として,手術などを通じて得られた腫瘍検体を元に遺伝子解析を含めた高いレベルでの検討を行うのみならず,培養した腫瘍細胞に対して薬剤や放射線感受性を検討することで,より個別的な治療法の可能性を提案することを試みています.最近では腫瘍に存在する遺伝子異常を手術中に解析するシステムを構築し,病態を手術中に把握することで手術を含めた個別的な医療を展開しています.

これらの先進的な試みにより,最適な治療法を個々の患者さん毎に提案・実行し,その時代のベストを尽くすことを目標としております.同時に患者さんから得られた腫瘍検体などの試料を元に研究を進めて,腫瘍の悪性化などの機序の解明,更には将来の治療法の開発に向けた基礎・トランスレーショナル研究を行うことで,現状の医療の質の向上を目指すのみならず,未来の医療を切り開いていきたいと考えています.